利用実態課題
低い国民の自転車に対する意識
世界が自転車利用推進に向けて、クルマから自転車への転換を目指している中で、我が国の国民の意識は、自転車に対して、駅までの端末の交通手段程度の低い位置づけしか持っておらず、クルマの利便を自転車利用より優先している傾向があります。内閣府の国民アンケート調査によると、自転車利用者ですら64%の人が、また、歩行者やドライバーでは8割近くが、クルマの利便性を抑制してまでは、自転車の利用を推進してほしくないという意識を持っています。自転車はあくまでクルマよりは劣位の位置付けの意識しかないのです。
〔出典〕内閣府「自転車交通の総合的な安全性上策に関する調査報告書(参考資料編)国民アンケート調査(N=1,501 MA)」 に基づき古倉作成
自転車利用の現状
自転車に対する意識は低くとも、自転車保有の状況や利用の実態は高い状況です。世界の自転車の保有状況をみますと、自転車保有台数は、8,700万台であり、一台あたりの人口では、日本は1.5人とオランダ程ではないですが、世界第6位となっており、世界有数の自転車保有国であり、また、自転車先進国並みの高い保有率を示しています。
国名 | 保有台数 | 保有率 (人口/台数) | 統計年次 | |
---|---|---|---|---|
1 | オランダ | 2,230 | 0.8 | 2013 |
2 | ドイツ | 7,300 | 1.1 | 2016 |
3 | デンマーク | 420 | 1.3 | 2001 |
4 | スウェーデン | 600 | 1.4 | 1995 |
4 | ノルウェー | 300 | 1.4 | 1995 |
5 | フィンランド | 325 | 1.5 | 1995 |
6 | 日本 | 7,223 | 1.8 | 2015 |
7 | イタリア | 2,650 | 2.2 | 1996 |
8 | フランス | 2,300 | 2.6 | 2000 |
8 | イギリス | 2,300 | 2.6 | 2002 |
9 | アメリカ | 12,000 | 2.7 | 1998 |
10 | 中国 | 37,000 | 3.7 | 2013 |
11 | 韓国 | 1,000 | 5.0 | 2014 |
〔出典〕自転車産業振興協会統計要覧51版 H29.6
また、一週間当たりの利用頻度も、自動車利用が多い豊橋市の市民アンケート調査でも多くの人が高い頻度で利用しています。
〔出典〕豊橋市「自転車利用に関する市民アンケート調査結果」(2012年、市民3000人対象、回収率33.6% 利用頻度を回答した自転車利用者)
また、利用目的も、買物が中心で、通勤通学等にも利用されています。
ここで注意が必要な点は、いわゆるサイクリングといわれるレクレーション・観光としての利用は主たる目的にあまりなっていないことです。やはり、都市内での日常的な利用が中心であることが分かります。自転車の利用促進は、このような日常的な利用において、クルマから自転車への転換を図ることが重要であることです。
自転車を最もよく利用する目的
課題
しかし、自転車利用を進めるに当たっては、様々な課題があることは、皆さんもご存じのことと思います。
1 | 根強いクルマ依存型の社会=車なしでは生活不可 |
2 | 自転車まちづくりの役割に対する過小評価=メリットが少ないと思われている |
3 | 自転車利用者ルールマナーに対する過大不信=問題点が多すぎると思われている |
4 | 国民の理解と行政の体系的総合的取組みの不足=断片的施策しか講じていないところが多い |
〔出典〕古倉整理
根強いクルマ依存型社会の迷信、自転車の重要な役割に対する過小評価、ルールマナーや放置に対する不信、これを受けての中途半端な自転車施策などが課題です。
大きなメリットがある自転車の利用促進を進めるためにはこれらを払拭していく必要があります。